2012年 初夏号
【社会科―資料活用力を育てる】
社会科では、「資料活用能力」を育てることが重視されています。ここでは「グラフを読み取るスキルを育てる指導」のポイントを考えてみましょう。
事実の発見から、その背景をとらえさせる
予想や確認で社会的思考力を高めることが大切
【折れ線グラフから読み取れること】
- 近年は漁業の生産高が全体的に減ってきている。
- 沖合漁業の生産高はそれまでの増加傾向から1986年ごろを境に急激に減ってきている。
- 遠洋漁業の生産高も1970年代から減ってきている。
- 沿岸漁業の生産高も緩やかに減ってきている。
- 養しょく業の生産高は少しずつ増えてきている。
グラフの特徴をつかむ
グラフは、算数科でも学習しますが、社会科でも必要に応じて各種グラフの特徴(【資料A】参照)について、指導していく必要があります。グラフを読み取る手順は、
- 表題・単位・出典を確認する
- 全体から部分の読み取りへ
- 変化、増減に着目する
などが挙げられます
グラフから事実を読み取る
【資料B】は、漁業別の生産量の経年変化を表した折れ線グラフです。このグラフからは、左上別項のような事実が読み取れます。 資料活用能力を育てるには、資料(グラフ)から読み取った事実について、既有の経験や学習をもとに予想したり、確かめたりして社会的思考力を働かせることが大切です。
変化の原因や背景を予想する
全体的に漁業の生産高が減ってきている理由は?
(1)日本人が魚をあまり食べなくなってきたからか。
(2)資源が減ってきたからか
(3)漁業をする人が少なくなってきたからか。
沖合漁業の生産高が1986年ごろを境に、急激に減ってきている理由は?
(4)取り過ぎで資源が減ったからか。
(5)海流など自然条件の変化があったのか。
遠洋漁業の生産高が1970年代から減ってきている理由は?
(6)200海里水域ができたからか。
(7)世界中の海で資源が減っているからか
予想を確かめ考えをまとめる
例えば(1)の予想については、わが国の魚介類の輸入量が大きく増えてきている事実(別資料)から見れば、間違いであることがわかります。(4)の予想については、(5)の予想と関連してマイワシの漁獲高が急激に減ってきたこと(別資料)で確かめられます。
予想するには経験や学習が生かされますし、予想を確かめるには別資料を探す必要も出てきます。そして「資源を保護しつつ漁業の生産を維持していくことの大切さ」に気付き、社会的思考力が育っていきます。
このように、グラフの読み取りでは「全体を見る」→「部分を見る」→ 「変化をとらえる」→「変化の理由を考える」ことを通して、資料活用力を育てていきます。