チャイム 2012年秋 首都圏版
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災害の〝追体験〟から学校独自の防災教育を考える―東日本大震災で津波被害に遭いながら、一人の犠牲者も出さなかった岩手県釜石市の釜石東中学校と鵜住居小学校。この事例から、教員が得られる教訓はどんなことだと思いますか? 重川さん(以下、黒字部分省略)“釜石の奇跡”といわれますが、私は、これは奇跡ではなく必然だと思っています。釜石市鵜住居地区の住民に話をうかがうと、5、6年前から地元の人たちが学校で津波の教育を一生懸命やっていたそうです。算数でも国語でも、教育小学生は防災教育が定着する絶好の時期「釜石の奇跡」から学ぶ─教育現場で見直すべきこと富士常葉大学大学院環境防災研究科教授 重川希志依さんに聞くは定着する時期に教えることが大切です。防災教育のように体で覚えることは、大人になってからでは勝手な解釈が入ってしまい定着しにくいですが、子どもはひたすら教えられたとおりに実行します。実は釜石だけでなく、児童生徒が日頃から教えられてきたことを、きちんとできたことで、被害ゼロだった学校はこれ以外にもたくさんあります。―まさに教育の成果としての必然ということですね。 適正な時期に身に付いていると、大人になっても無条件で行動に移せる。これは環境教育でも道徳教育でも同じです。小学校の時期は特に、行動を伴う学習が大事な時期です。だからこそ、小学生のときに正しい防災教育をしておかないといけないのです。―正しい防災教育の一番のポイントはどこにありますか? 小学生の時期でしたら、最低限、自分の身は自分で守れるような行動技術を定着させることですね。たとえば、地震のときは大抵、「机の下に潜って机の脚を持ち、揺れが収まったら、防災ずきんをかぶって校庭に避難する」―と教えられています。でも、潜るべき机がない場合もあります。以前の例では、地震があったとき、書き初めをしていてイスも机も廊下に出していた。そのため、潜るべき机がない子どもたちは茫然自失。揺れが収まったら、自分の防災ずきんを探すのに右往左往でした。大人なら臨機応変に手近なものを身に着けますが、子どもは教えられたとおりにやりますから、自分の防災ずきんを取らなくてはダメだと思い込んでしまいます。体育館でも運動場でも下校途中でも、隠れるべき机はありません。このように、「机がないときは、どうしたらいいの?」ということを、先生たちに考えてほしいのです。自分の身を自分で守れる技術を 昨年3月11日の東日本大震災を教訓として、児童の命を守るために、教育現場で考えておくべきことは何なのか。防災のエキスパートとして知られる、富士常葉大学大学院環境防災研究科教授の重川希志依さんに聞きました。

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